Bart and Daphne Araujoインタビュー

【アローホ・エステーツ・ワインズ】不動産業で成功を収めたバート・アローホとランドスケープ・アーキテクトとして経験のあるダフニーが1990年に購入したワイナリー。現在では完全なビオディナミ農法により、自然に優しい本格的なワイン造りをしている。

【ジェイミー・アローホ】バートの娘であり、アローホ・エステーツ・ワインズの副社長兼輸出市場を担当。醸造学を学び、現在はフランス人の旦那様と2人のお子様でフランス在住。

このインタビューは2013年4月に新宿のパークハイアットで行われました。2013年7月現在、アローホ・エステーツ・ワインズはボルドーのシャトー・ラトゥールのオーナーでもあるフランソワ・ピノー氏により買収されました。これは、今後のナパ・ヴァレーにとっても、アイズリー・ヴィンヤードにとっても、プラスになることを期待したいですね!

この会話に出てくるアイズリー・ヴィンヤードとは、アローホ夫妻が1990年に購入した畑の名前で、ナパ・ヴァレーで最も優れた畑として知られる。アローホ夫妻が購入する前はジョーセフ・フェルプスがアイズリー・ヴィンヤードのブドウを購入して、単一畑のワインとしてリリースをしていた。

ナパ・ヴァレーのカリストーガにある
アローホ・エステーツ・ワインズ

武村: 今回の来日もパークハイアットに泊まっているんだね。ここは素晴らしいでしょ。

ダフニー: 何もかも最高級だわ。特に朝のルームサービスがとっても素敵。

ジェイミー: 私もここに泊まるのは3度目なんだけれども、何度泊まっても質の高さには驚かされるわ。

武村: 今日は技術的なことよりも、日本の消費者のみなさんにアローホ・エステーツのソフトな一面を知ってもらいたくてさ。

ダフニー: でも日本の消費者の方々は詳しい方が多いわね。たまに話を伺っていると、そんなことまで知っているの?とビックリするわ。

新宿パーク・ハイアット・ホテルから
一望できる東京の町並み

武村: 私もワイン業界に入って15年程になるんだけど、消費者とのコミュニケーションは本当に難しいと感じているんだ。詳しい人とはマニアックな会話でいいんだけれども、そうでない人とは、ベーシックな会話をするけれども、上から目線にならないように注意しているよ。

私はブルゴーニュが好きなんだけど、テロワールや土壌やルートストック等の話は、普通のお客様には伝わりにくいからね。

ダフニー: でも私達のワインがどうして特別なのかを説明するには、テロワールを語らずにはいられないわよ。

武村: そうだよね。

ジェイミー: アローホ・エステーツの土壌や気候もそうだけれども、ワイナリー全体の雰囲気もテロワールの一部と私は思うのよ。うちを訪問するお客様は、車を出た瞬間に風景と偉大さに圧倒されてるのがわかるわ。私達が言うのも変な話なんだけど、アイズリー・ヴィンヤードは本当に素晴らしい畑なのよ!

武村: それもテロワールだね。私も去年10月に訪問したときは、飛行機が遅れてしまって、結果アポに45分くらい遅れてしまった。かなり焦って到着したんだけど、着いてバートとダフニーに外で会った瞬間、なんだか小さな事は忘れていいのかな、って思わされた、笑。

ジェイミー: テロワールね、笑

武村: アローホ・エステーツのワイナリーは、いい意味でとてもシンプルでオーソドックスだよね。

ダフニー、バート、ジェイミー、
ソムリエ遠藤

ダフニー: 1990年に私達がワイナリーを買収したときには、小さな家と物置小屋くらいしかなくて。それでワイナリーの設計をとある会社に依頼したのよ。丘にダイナマイトで穴を掘って、そこにワイナリーのセラーを設置て、それに隣接する形でワイナリーを建てて、それが完成したら、2個目の穴を掘って、セラーを増設して。デザインセンスの全く違う2人の建築家が関わったんだけど、2人目の建築家はワイナリーの建物としてタワーを建てたり、とても複雑なイメージを描いていたんだけど、景観設計家として経験があった私はシンプルなデザインが好きで、なんだか黙っていられなくなっちゃって、笑。
その論議をしている時に、たまたま見ていた古い本の中にヴァージニア州のワイナリーの写真が載ってて、とてもシンプルな平屋のデザインなんだけれども、それを見てビビっときたのよ。それで、建築家の人にそのままお願いしますと頼んだのよ。
バートも私もオーソドックスなカリフォルニアスタイルの建築が好きなのよ。

武村: 1990年にアイズリー・ヴィンヤードを購入してからは、まず何をしたの?

ダフニー: 私達が購入したときは、ブドウの樹々があまり健康な状態じゃなかったのよ。アイズリー氏も高齢になっていたし、後継者がいなかったから、畑の手入れまで行き届かなかったんだと思うの。だからまずしたことは、購入した36エーカー程の畑のうち、健全じゃなかった20エーカーを植え替えたのよ。

バート: そうさ。アイズリー・ヴィンヤードの歴代所有者は全員がブドウ栽培家で、1886から1990年まで、あの土地でワインは造られていなかった。僕らが購入してから始めて、ここでワインが造られるようになったんだ。あとは、敷地内にあった納屋や物置場も歴史的な建物だったから、それの修復作業も行って、なんだかんだいって全てが完成したのは9年後の1999年だよ。

1991年に植え替えられた
アイズリー・ヴィンヤードの区画

さっきダフニーが言った大掛かりな畑の植え替えは、1991年に行ったんだけど、そのブドウがちゃんと育ってきて安定してからは、その他区画も部分的に植え替えを継続して、ブドウの平均樹齢がすべて若くなりすぎないように気をつけながら植え替えをしたんだ。

僕の友人でカベルネ・ソーヴィニヨンを栽培しているヤツがいるんだけど、そいつは植え替えをしないで、そのままずーっと畑を放っておいてた。でもカベルネ・ソーヴィニヨンは他のブドウに比べて病気にかかりやすい。案の定その畑に病気が広まってしまって、全てを一斉に植え替えをしなきゃいけなくなったんだ。そうなると、素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンを生産していたのに、突然、何にも生産できなくなる。植え替えをして数年後に生産できるようになっても、全てが若い樹だから、質もあまり良くないんだよね。

アイズリー・ヴィンヤードではそうならないように、畑の植え替えは部分的に定期的に行うようにしている。

武村: じゃアイズリー・ヴィンヤードの今の平均樹齢はいくつくらいなの?

バート: 平均的なことはわからないけど、1991年に行った植え替えたブドウが今年で22年目で、それが畑の半分以上をしめている。古樹と若樹の違いは歴然で、ブドウは10年目に始めて複雑味が出始めて、20年目からやっと素晴らしいブドウになるんだ。

ワイナリーの待合室に列ぶ、歴代の
アイズリー・ヴィンヤード産ワイン
一番左が噂の1971年のリッジ

ダフニー: アイズリー・ヴィンヤードが単一畑として始めてボトリングされたのは1971年で、リッジ・ヴィンヤーズが醸造販売したのよ。そのワインはこのアイズリー・ヴィンヤードに1964年に植えられたブドウから造られたんだけど、でもリッジのポール・ドレイパーは、そんな若樹でも素晴らしいワインを造ったのよ。フランスの常識でいうと、樹齢10年以下のブドウからワインを造るのはありえないんだけど、造ってみなきゃわからないというのもあるわね。

バート: そうさ。それもアイズリー・ヴィンヤードという畑のテロワールの素晴らしさを物語っている。アイズリー・ヴィンヤードのそれぞれの区画にはもちろん上下関係があって、とある1つの区画、ここを僕らは「ブロック3」と呼んでいるんだけど、ここから成るブドウは特級中の特級。名前はあまりロマンチックじゃないけどね。

アイズリー・ヴィンヤードのブドウがまだジョセフ・フェルプスに売られていたときは、彼らはこの区画を「ゴールド・ブロック」と呼んだらしい。

この「ブロック3」には1964年と1978年に植えられた樹々があったんだけど、1978年に植えられたブドウはフィロキセラに完全にやられてしまた。

ブロック3に植えられている
カベルネ・ソーヴィニヨンの状態を
確認するバート・アローホ

武村: そんな歴史的なブドウなのに、もったいないね。じゃ1971年のリッジの前までは、どこにブドウが売られていたの?

ダフニー: ナパ・ヴァレーの共同生産者(コープ)よ。それからガロのハーティー・バーガンディ(大量生産されている安いカリフォルニアの赤ワイン)に入ったんじゃないかしら、笑

武村: うそっ!

ダフニー: 本当よ。

バート: 当時は単一畑とかあまり気にされてなかった。だからどんなに素晴らしい畑からできたブドウもすべてコープにバルクで売られたのさ。

武村: アイズリー・ヴィンヤードではシラーやヴィオニエも植えられているけど、それはアイズリー・ヴィンヤードのテロワールに適しているからなの?それとも、もともとあったブドウなのかな?

2012年産のカベルネ・ソーヴィニヨン

ダフニー: もともとはジョーセフ・フェルプス(カリフォルニアを代表する生産者でカベルネ主体のインシグニアが有名)本人がローヌ・レンジャーで(シラー、グルナッシュ、ムールヴェドルなどの仏ローヌ品種をカリフォルニアで手がける生産者)彼がアイズリー氏にシラーを植えるように説得したことが始まりなのよ。
それで、畑の一番良質な部分に7エーカーのシラーが植えられてしまって、苦笑。

それでそのシラーが醸造されて販売されたんだけど、ある日、ジョーセフ・フェルプス・ワイナリーの広報の人が、ジョー本人に、もうシラーは在庫が有り余ってて売れないから造らないでくれって頼んだらしいの、笑。

結果アイズリー氏はそのシラーをカベルネ・ソーヴィニヨンに植え替えたって聞いたわ。

でも、設立当時のワインメーカーのトニー・ソーターと一緒に畑を歩いていて気付いたんだけど、どこを見てもあきらかにカベルネ・ソーヴィニヨンではないブドウの樹が畑に点々と残っていたのよ。後日、それがシラーだということが判明して、アイズリー氏に事情を聞いてみたら、ジョー・フェルプスのシラー全てをカベルネ・ソーヴィニヨンに植え替えた訳ではなくて、いくつかは畑にそのまま残していると説明されたのよ。

だから、私もすごくエキサイトしちゃって、トニーにシラーを造りましょう!と話を持ちかけたんだけど、彼はとっても消極的だったわ。

発酵中のワインがタンク毎に
試飲されます

ジェイミー: トニー・ソーターといえばピノ・ノワールですもんね!

ダフニー: 結果、アローホでシラーを造ることになったんだけど。シラーの樹は100本くらいしかなくて、成るブドウが本当に少量で、ワイン造りも、ブドウを潰す作業も本当に困難で。でも、その苦労の末、出来上がったワインを味わったときは本当に美味しくて感動してしまって!だから継続して造りましょうということになったのよ。それで追加で畑にシラーを植えたのよ。

武村: アイズリー・ヴィンヤードのテロワールはシラーに適しているの?

バート: もちろんさ。でもシラーは基本どんな環境を与えても育つブドウだけどね。うちの畑のどこの部分で育ったシラーがどんな特徴を現すかとか、試行錯誤を重ねてワインを造ってきて、現在では品質の安定したシラーを年間500ケース程生産しているんだよ。毎年好評で完売さ。メーリングリストのお客様の割当を決める作業はそれだけでも大変なんだけど、とある1人のお客様は、シラーの割当をくれなきゃカベルネ・ソーヴィニヨンを買わないとまで言い出して、苦笑。本業はカベルネ・ソーヴィニヨンなんだけどね。

ダフニー: シラーは売るのが確かに大変な品種だけど、どんなブドウよりも食事に合わせやすいし、ソムリエさん達もシラーが好きな人が多いでしょ。

ジェイミー: だってバートの大好きなワインはラ・ムリーヌだからね(北ローヌのギガル社が造るコート・ロティ)。うちのシラーもそれをモデルにしているんだけど、シラーとヴィオニエの混醸造をする所も同じよ。アローホのシラーをカテゴリーに入れるとしたら、冷涼気候のシラーになるかしら。そんなエレガントなスタイルなのよ。

武村: じゃ、ヴィオニエは?

最近流行のタマゴ型の発酵容器
ソフトで丸みのあるワインが造れるとか

バート: ヴィオニエはシラーとの混醸造の為だけに植えられた品種なんだけど、年によっては、ヴィオニエが余ってしまうから、そのときは、ヴィオニエとして別にリリースするんだ。だが、あまり安定供給できないワインだから、知る人ぞ知る的な存在だよ。生産量で言うと、2007年は35ケース、2008年はゼロ、2009年はゼロ、2010年は50ケース、2011年はゼロ、2012年は素晴らしい年だったから100ケース程。でもあまりに生産量が少ないから、誰に売って誰に売らないとか、なんか逆に政治的に難しいんだよ、苦笑

武村: シラーとヴィオニエの混醸造は技術的に難しいし、リスキーなんでしょ?

バート: そうだね。チャレンジングだよ。でも別々に醸造して、のちにブレンドするのとは全然違う。混醸造したワインは、口に含んだ時の舌触りと口当たりが素晴らしいし、シラーの渋み成分がちょうど良く抑えられる。これは、出来上がったシラーとヴィオニエを事後にブレンドしたワインでは得られないんだ。

武村: 口当たりは変わるけど香りは変わらないということ?

ダフニー: そうね。やっぱり舌触りが一番違うわね。香りは混醸造をしたワインの方がオープンだと、ワインメーカー達は言うわ。

バート: でもワインメーカー達は、混醸造がうまくいくかが心配で、発酵期間中は毎晩寝れない日々を過ごすみたいだよ。その反面カベルネ・ソーヴィニヨンはマナーが良いブドウだから、そこまで見ていなくても大丈夫だからね。

武村: でも1997年はシラーはリリースしていないよね?どうして?

バート: 味が気に入らなかった、笑。だからバルクで売ってしまったさ。

ナパの実業家オーラがハンパない
アローホ夫妻
ソムリエ武村も緊張気味です、苦笑

武村: アローホを1990年に設立する前は、バートはワインコレクターだったの?

バート: 私はあまりワインに詳しくなかったんだ。晩酌はスコッチをロックで2杯、ワインを飲むなら某カリフォルニアの白ワインをキンキンに冷やして飲んでいた。アローホを購入してからは、世界中のワインのプロフェッショナルや愛好家、コレクター達と出会う機会があって、そこから、僕らのワインに対する視野も広がったし、もっとワインを好きになったんだ。

ダフニー: 私達もアローホが始まってからは、カリフォルニアワイン以外のワインを飲んで勉強したいと思うようになったのよ。だからレストランとかでも、ソムリエさんにカリフォルニアワイン以外のワインでオススメをお願いするのよ。最近ではプリオラートのクロス・イラスマスとか、自分達では絶対に買わないようなワインに巡り会えるから。

武村: じゃあアローホ夫妻のワイン好きは設立後から始まったんだね。

ジェイミー: あら、そう?その前もブルゴーニュに行ってなかった?

バート: いってたけど、右も左もわかっていなかったさ。僕らは色々な人にワインを教えてもらったんだけど、そのなかでも特に、ローズ夫妻(バーニー・ローズとベル・ローズ夫妻で、ハイツ・セラーズの設立オーナーで、後ナパのベラ・オークス畑の栽培家)にはお世話になったさ。バーニーは本当に才能あるテイスターで、謙虚で素晴らしい人間。何度も彼らの自宅でのディナーパーティに招待されて、たくさんの古酒や偉大なワインを開けてくれてワインを教えてくれたんだ。

気品あふれるダフニーと紳士的なバート

あとは、ミルトンとバーバラ・アイズリー夫妻もそうだし、デイヴィーズ夫妻(カリフォルニアのスパークリングの大御所シュラムスバーグのジャック・デイヴィーズとジャイミ・デイヴィーズのこと)にも本当にお世話になったし、彼らが僕らの「親」的な存在になってくれて、ワインの全てを教えてくれたのさ。

それは、今だから思うけど、僕らのためでもあっただろうし、ナパに住む彼らからしてみれば、アイズリー・ヴィンヤードという歴史的な畑を受継ぐ人間としてのトレーニングも兼ねてたのかもね。

ジェイミー: ナパの人達は本当に本当に気前が良くて寛大なのよ。

バート: ジョー・フェルプスも忘れてはいけないな。彼は、自分のセラーを僕に見せてくれて、この中のワイン、好きなのを試飲して勉強しな、と言ってくれた。彼の好意で、ジョーセフ・フェルプスのアイズリー・ヴィンヤードのカベルネのヴァーティカル試飲会を開催してくれて、1975年から最後の年まで、全部を試飲する機会を作ってくれたんだよ。

ロバート・モンダヴィも、オレが役に立てる事があれば、なんでも言ってくれとオファーしてくれたし。。。。

武村: 家ではどんなワインを飲むの?

バート: ダフニーがどんな食事を用意しているかによるよ。ほら、説明して、笑

ダフニー: 私の調理する食材はほとんどが自家栽培している畑の野菜なのよ。仕事の関係で外食が多くなるから、家ではシンプルな料理が食べたいのよ。その日に採れた野菜でパスタを作ったり、その時はバートが、「じゃイタリアンだね」と言ったり、その他の時はほとんどがローヌの赤だったり、笑

その他で特に最近好きなのは、ボルドー、スペイン、ブルゴーニュよ。最近のお気に入りはデュクリュ・ボーカイユかな。

武村: アローホ夫妻はセラーにかなりの本数をお持ち?

今までにリリースされた全ての
アローホ カベルネ・ソーヴィニヨン

バート: どうだろう1,600本くらいのセラーだよ。そのコレクションも、世界中の様々なワインを集めるようにしている。いつもカリフォルニアのワインばかり飲んでいたら勉強にならないし、視野もひろがらないからね。例えば、「一流のドイツのリースリング」というものがどんな味がするのが、「一流のリオハ」はどんなワインでどんな意味があるのか等、そういうことを常に考えて収集して飲んでいるんだ。

それを勉強すれば、自分たちのワインを造るときにも参考になるし、様々なテクニックを適用できるだろ。

アローホでは、コンサルタントとして、ミッシェル・ロランに監修を頼んでいるんだが、僕らが彼と一緒に仕事をしている理由はそこにある。彼は100以上のクライアントを世界中に持っていて、彼以上に世界中にある数々の一流ワインに携わっている人間は、このワイン業界に他にいないだろう。だから、僕らのワインも毎年世界のワインと比べられるし、それによって向上心も湧いてくる。

彼と仕事をすることに凄く批判的になる人もいる。でもそれに対して僕は、じゃ、アローホのワインの1991年から2005年のヴァーティカルを飲んで、どの年からミッシェル・ロランがコンサルタントとして始めたか、味だけで区別がつくかと?言うんだ。わからないだろってね。

武村: アローホは、ハーランや、ダラ・ヴァルと共に「カルト」カリフォルニアワインの第一人者だよね。

バート: そうだね、うちのファーストヴィンテージが1991年で、ハーランは1990年、ダラ・ヴァルは1988年かな?
その後はコルギンとスクリーミング・イーグルが1992年でしょ。ブライアントも1992年だよね

武村: 私の中ではその辺りの「カルト」ワインの中ではアローホは本当にエレガントで繊細な一面を持っているワインという位置づけだよ。
特に1996年のアローホは、私にとっては、ナンバーワンのアローホかな。

バート: ありがとう。ヨシのナンバーワン・アローホと、ミッシェル・ロランのナンバーワン・アローホは同じなんだね!

アイズリー・ヴィンヤードという特別な畑があって、そこの成るブドウがこういう繊細なワインを生み出すんだから。僕らも繊細なワインが好きだし。

フランス在住の娘の
ジェイミー・アローホ

ジェイミー: 私が第3者として言わせてもらうと、アローホはワイナリーでもあるし、アイズリー・ヴィンヤードという畑がある場所でもあるけど、それ以前に、バートとダフニーが住んでいる「家」ということを忘れないでほしいわ。自分たちでワインのスタイルを作り上げて確立するのではなくて、生活感があったり、その周りに自然があったり、私の子供達が走り回ったり(笑)、ここはまず第一に「家」なのよ。だからワインを造る人にそういう優しい気持ちが芽生えて、その気持ちがワインを優しくしていると信じているのよ。

バート: まぁジャイミーは家族だからバイアスがあるけどね、笑

武村: ジェイミーはフランス在住だから毎日フランスワインしか飲んでないんでしょ。

ジェイミー: 向こうではそれ以外にオプションが無いのよ。あ、でも最近では上質なイタリアとスペインワインも飲めるかしら。
だから夏休みにナパに帰ってくるときは、バートのセラーを物色して好きなワインを選ぶの、笑
昔はロンドンに住んでいたんだけれども、イギリスでは好きな時にどんなワインでも手に入ったのに、フランスは大違い。もちろんフランスワインは美味しいけれど、それでもたまには違うものが飲みたいじゃない?

武村: リッジのジンファンデルはフランスのワインショップでみたことがあるよ。1本100ドルくらいで、苦笑

ダフニー: モンダヴィのウッドブリッジもあるじゃない?

ジェイミー: そうね。

ダフニー・アローホ、バート・アローホ
二人のこのスマイル、本当に素敵です

武村: 最後に消費者がアローホのワインを買った時に、どんな味わいと、どんな体験を期待すればいいのか一言お願いできるかな?

ダフニー: 一番好きな表現で、アローホのワインのどのヴィンテージにも共通しているのは 、「軽みのある重さ」かしら。それに伴う、タンニンのなめらかさと繊細さ、シルキーな口当たりと土壌を感じるミネラル感と、ジャストな酸味。

バート: その通り。エレガントというのは軽いと思われがちだけど、そうじゃないんだ。アローホのワインのバランスは、どっしりした舌触りの中に感じられる軽みなんだよ。黒い果実よりは赤い果実、ハーブ、特にローリエのニュアンスもあるし、良いヴィンテージのワインはすみれや鉛筆の芯のような香りもする。

ロバート・パーカーの言葉になるんだけど、彼はどこかのインタビューで、優れているワインの6つの要点を聞かれていて、そのなかで、私は1つしか覚えていないんだけれど、その1つの要点を説明するのに1993年のアローホのワインを例としてあげてくれた。それは、ボトルを1本を飲んだ時に、最後の1滴が最初の1滴よりも美味しいということ。アローホのワインは、1本飲んでも舌が疲れることがないということさ。アローホのワイン一口一口が、それぞれ違う味わいと表現を持っている。そんなワインがアローホのワインさ。

Wine Type